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バンド仲間、ベースのタケシと僕のエピソードです。
タケシとは、僕の高校時代のバンド仲間、タカハマの紹介で知り合った。中学の同級生でベースをしている男がいると。
 
高校の時タカハマとタケシの家を訪ねたことがあった。30年以上前のことなので、もう時効だと思うが、タケシは自分の部屋で山盛りなった灰皿から、まだ吸えるシケモクを探して吸っていた。随分変わった奴だと思った。でも、なかなか面白い奴かなとも感じた。
 
大学生になってもバンドを続けていたのだが、ベーシストが一身上の都合でやめることになり、タケシにお願いすることにした。
僕らは好きな曲を持ち寄り、年に数回ライブハウスで演奏していた。コピーバンドだ。
僕の演りたい曲は浜田省吾だった。
ちょっと影のあるシャイなラブソングと矛盾だらけの社会に訴えかけるヘヴィな曲に僕は高2で心酔した。
タケシは、僕とは真逆で、キレイな旋律が好きで(そんな風には見えないんだけれど)スタイリスティックスなどのソウルや、角松敏生や安部恭弘などのシティポップを演りたいと提案していた。
ロックとポップス、変な取り合わせだけれど、コピーバンドにはありがちなのかもしれない。でもバンドの時間は、僕の20代の何物にも代えがたいものとなった。
 
さて、エピソードを語る上でも1人重要な人物がいる。ユミちゃんだ。
ユミちゃんは、タケシとタカハマと同じ中学で、タカハマと僕の高校の同級生でもある。
 
タケシはユミちゃんに恋焦がれていたのだ。
タカハマはもちろんだけど、僕のバンドメンバーも全員それを知っていてタケシを応援していた。
ユミちゃんは、人気者で、恋敵は数知れずだった。
タケシはそんな人気者のユミちゃんに想いを伝えてはいたのだが、なかなか恋は成就しなかった。
 
ある夜、スタジオでの曲合わせのことで僕はタケシに電話をした。
すると、様子がいつもと違っていて、鼻声で、元気がないのだ。
「なんかおかしいな」と思っていると電話の向こうから「片想い」が聴こえてきたのだ。
「あっ!」と思った。タケシが最後の告白をすると言っていたことを思い出した。
何も聞かず『ダメだったんだ・・・』と合点した。
タケシが「フラれた」と言うと、僕は「うん、うん」しか言えなかった。
タケシと僕はそれから「片想い」をBGMに電話を握りしめ、しばらく泣いていた。
 
この出来事はその後笑い話になる。何で電話が来た時「片想い」切らずに浸ってるんだよ。
何でおまえら、電話で泣いてるの?と。
 
でも、「片想い」を聴くといまさらながら分かる。
当時のタケシの想いにおもいっきり寄り添った曲であることに。
あの人のことなどもう忘れたかったのだ。思いを寄せても遠く叶わないから。
タケシは言うまでもなく女子ではない。
でも、「片想い」はワンフレーズ、ワンフレーズは当時のタケシに刺さった、いや染みていったの手に取るように分かる。
きっと癒されんじゃなかと思う。
40年近く前のあの日、タケシと「片想い」をバックに電話で泣きあったことは、タケシと僕の忘れえぬ思い出だ。
 
この話、後日談がある。
あきらめの悪いタケシは、懲りずにまたもや告白して、なんと思いが叶ったのだ。
そして、二人は一緒になり、2人の子どもに恵まれた。
タケシは今や「I’am Father」なのだ。

inopapa 2024/08/24
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