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6年前の6月24日 午前6時20分。 朝の訪れとともに、父は永眠した。 享年79歳。 静かな、まるで眠るような旅立ちだった。 翌日の通夜、翌々日に行われた告別式には、親戚をはじめ数多の父の知人友人が参列してくださった。さながら奇妙な同窓会のような空気も流れていたその会場のロビーに設置されたテレビモニターからは、両日の間、とあるDVDがエンドレスで流れていた。 それは、父の生涯をまとめたショートムービーだった。 「お父様の写真が何枚かあれば作れますよ」と亡くなった当日の午後、葬祭会館のスタッフさんにそう提案されたワタシは、躊躇することなくそれに同意した。葬儀の打ち合わせを中座して車で5分ほどの距離にある実家に戻り、古いアルバムと自身のスマホの中から晩年の父の写真を選んでスタッフさんに数点の写真を渡した。その時にスタッフさんに「出来るのなら、BGMはこのカセットの最後の曲にしてもらえませんか?」と実家から一緒に持って来た古いカセットテープを手渡した。 翌日出来上がったDVDは5分に満たないショートムービーだったが、戦時中に生まれ、高度経済成長の時代に青春を謳歌し、巷がバブルで浮かれていた頃に仕事の不振や病気で苦渋の時期を耐え過ごし、そして晩年には5人の孫に囲まれ好々爺となった父の生涯が映し出されていた。そのバックには、ワタシがお願いした「THEME OF FATHER'S SON (遥かなる我家)」が、静かに、だけれども力強く流れ続けていた。 通夜が始まる間際、ロビーに流れる父のこのショートムービーを叔父がぼんやりと眺めていた。 もうすぐ式が始まることを告げるために近づいたワタシに気づくと、「いい映画を作ったのう」と叔父は独り言のように呟き、そして「お前のお父さんは、ええ人生じゃった」と続け、ゆっくりと会場の中へと入っていった。

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