きゃんでぃ

我が家は長い間、単身赴任家庭でした。 夏休みもなかなか家族揃って遊ぶことが叶わず、それを知っている兄家族や両親が一緒に遊んでくれていました。 娘が小学校6年生の時です。 実家から戻る車の中、いつもは後部座席で眠ってしまう子供たち2人ですが、その日は娘は起きていました。いつも車の中に流れているのは省吾の曲。私が好きな曲をセレクトしたカセットテープを聴きながら運転しています。 暗い窓の外を見ながら、娘が 「この歌を聴きながら、夜の風景を見てると、なんか切なくなるんだよね」 この歌というのが♪sweet little darling。 兄夫婦も祖父母も、いとこたちも、よくしてくれて一緒に遊んで楽しく過ごしていても、帰り道に、どこかお父さんがいない淋しさを感じていたのでしょう。おねえちゃんでいようとする彼女の頑張りの中に、淋しさが蓄積されていたのかもしれません。甘えるのが下手な娘の気持ちがルームミラー越しに見えた横顔に浮かんでいる気がした。 もの思う春の入口にいる娘に、かける言葉が見つからず、ただフロントグラスを見つめ、ハンドルを握りしめながら 「♪いい曲だよね…」としか言えなかった。 今でも、ライブでこの曲を聴く度に、フロントグラスに流れた夜の景色と、ルームミラー越しに見た娘の横顔が浮かんできます。

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