かずくん

「晩夏の鐘」を聴くたびに、私は必ず思い出す風景があります。大学生だったあの頃、金沢からふらりと出かけた仲間との旅。その旅の中で目にした、車窓から広がる神戸の夜景です。 ある日のこと、午前中の講義を終えて友人たちと何気なく過ごしていると、「今から倉敷までドライブしようか」という突拍子もない提案が飛び出しました。0泊2日の無謀な計画にもかかわらず、若さゆえの勢いで、私たちは迷うことなく車を走らせました。 道中、姫路城に立ち寄り、倉敷では地元の人々と和やかに記念撮影を楽しむなど、旅は予想以上に充実したものでした。そんな帰り道、夕方から夜へと移り変わる時間に、神戸の街並みが車窓に広がり始めました。マンションの窓が次々と灯り、いつの間にか美しい夜景が目の前に広がっていました。 その時、カーステレオから「晩夏の鐘」が流れ始めました。静かなメロディーと共に、私はその夜景に心を奪われました。窓の灯り一つ一つに、そこで暮らす人々の物語が息づいているかのように感じられました。その想像を友人たちと分かち合うと、私たちは次々に即興で物語を作り上げ、車内は笑い声で溢れました。 今でも「晩夏の鐘」を聴くと、あの無邪気で冒険心に満ちた倉敷へのドライブと、心に深く刻まれた神戸の夜景が鮮やかに蘇ります。そして、あの瞬間にもう一度戻れるなら、もう一度あの旅をしてみたい、そう心から思うのです。

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