にっちゃん

もう30年も前。 彼、彼といっても友達以上恋人未満のような彼は22才。私は23。 お互いの気持ちは手に取るように分かりながら、状況やら見栄やらプライドやら本音やら建前やらそんなくだらない事にがんじがらめになって身動きが取れなくなっていた。顔を合わせても少し悲しげな笑顔で当たり障りのない笑い話をしてたよね。 ちょうどその頃共通の友人から誘われた浜田省吾のLIVE。 グループデートのような軽いノリでそのLIVEに参加しあの時あの場所であの曲「少年の心」を聴くまでは、 曖昧な気持ちのままこのLIVEの帰り道を最後にもう会わなくなるんだろうって、苦い薬を飲み込むように分かっていて。 あの曲を聞いてる時彼はどんな顔して聴いているのか彼の顔を見たかったけれど、こんな泣き顔向けられないなと思って下を向いてしまって。 LIVEの帰り道「次の日曜、海までドライブ行こう、お前の車で」って言われた時、いやあの曲を聴いた時点で曖昧ではないお別れの時が来るんだとハッキリと分かっていたのかも。 とても辛い眠れない日が少し続いたけど、その日曜日は今まででいちばんの笑顔の私とワインボトルを車に積んで、ゆっくりドライブに行ったな。 今はどこかで幸せにしているであろう彼との思い出は、その後何度色んな恋愛をしても霞むことなく、色薄れることなく心の中に描き出されたまま。これからも大切にしまっておこう。

投稿されるユーザーについては、利用規約に同意したものとみなします