Lemon

今から35年くらい前、当時付き合っていた彼女とは、高校時代に付き合い始め、お互いギターで弾き語りを楽しむ趣味を共有し、地元の誰も来ない山の中の隠れた神社の社殿に腰を下ろし、よくギターを弾いていました。 高校卒業と同時に、彼女は地元の看護学校へ、私は神奈川県の大学へ進学、遠距離恋愛の始まりでした。 4年間、週に一回くらい、近くの川沿いにある公衆電話に100円だまを数枚握りしめ、寮生活を送る彼女へ電話し、月一回くらのペースで彼女は、私のオンボロアパートへ通い、一晩過ごして帰るという、そんな日々を過ごしていました。 大学卒業後、私は東京の会社へ就職し、彼女は、地元で看護師として働いていました。 そのころ、18枚目のシングル『LONELY-愛という約束事』が発売され、そのB面に収められていた『もうひとつの土曜日』がすごくよくて、そのEP盤を彼女に贈りました。 そして、「地元へ帰ろう」「彼女のそばにいて、指輪を贈ろう」と心に決め、地元へ戻りました。 「子供の頃、君が夢見てたもの、叶えることなど出来ないかもしれない。ただ、いつも傍にいて、手をかしてあげよう。受け取って欲しい、この指輪を。受け取って欲しい、この心を。」 と、しかし数か月後、私の青春は幕を閉じたのでした。指輪も贈れず、なぜ彼女が去っていたのかもわからず。 あれから35年、こんな話をするなんて思ってもみませんでした。

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