ナオキ

還暦を過ぎて、この夏上高地に行きたくなって一人で旅をした。上高地の景色は変わらず僕を迎えてくれた。 本当は大学の頃彼女と行く筈だったがその前に別れてしまった。いわば淋しさ忘れの旅だったか? 上高地の雄大さに癒されかえるバスの中、途中大正池の停車場から老夫婦が乗ってきた。僕の一つ斜め前の席だ。何げなく見ると大学の時まさに彼女だった。 斜め後ろからだがホクロの位置、かぎはなの形40年と月日は流れどかわらなかった。初めてあった時のささやき <初めてあった時ビビッと感じたのあなたと恋するって> それからわずかだったけど夢のような時を過ごし別れた。彼女を忘れる為にいくどか恋して別れた、その思いが40年前の事なのに彼女の後ろ姿から走馬灯のように 蘇るようだった。涙が出そうな時間だった、最終で降りた時彼女も僕を見た時は何も感じなかったが先を歩く彼女がふと振り返って僕を見直した時何か感じたのかも知れない。男は過去の幻想に生き女は現実に生きていく。 家にかえり家内は知らない箱の中に彼女の写真がある 変らない。

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