Smile

<🎵ガラスの部屋 より 続き> 長い一日が過ぎようとしていた。 彼が隠し続けたもう一人の女性と3人で会う約束の日。 どのような女性なのかを想像するには あまりにも不必要な時間だ。 考えたくないと思いながら 頭の中は そのことでいっぱいになる。 心が “考えたい”と欲している。 夜になってから 二人は現れた。 彼女の口から 直接 “本気です”と言われたなら なんとか 心の動揺を鎮める手がかりを見つけられるはずだった。 でも 昨日の彼と同じく ひと言も語ろうとはせず 時に 何が愉快なのか 今にも吹き出しそうになるのを 必死に我慢しているかのような彼女の表情に違和感を覚えたが 何とか無言を通すことで お互いが お互いをかばい合っていることは理解できた。 一番苦しい時に 一番身近にいて助けてほしい人が 今は 反対側の岸辺で 別の女性を気遣っている。 そんな構図が頭の中に浮かんだ。 気まずい雰囲気の中 彼は黙って出ていき その後を 彼女は追った。 ひとり残された部屋は 真っ暗だった。 音も なかった。 心は 波立っていた。 でも 何も感じられない。 何をどのように感じたらいいのかさえ 全く分からなかった。 もう 心が欲するという事もなかった。 肉体のみを残した空っぽの私が 眠っている子供の傍で ぺっちゃんこになって座っていた。 その時 声が 歌ではなく ある詩の一編が  時間的経過を伴うことなく 瞬時に 真空状態の耳に 矢が真っすぐ飛んでくるように突き刺さった。    🎵 Sweet little darling 誰よりも・・・ 遠い昔に聴いたこの曲の言葉が 何故 急に耳に映し出されたのかわからない。 だけど 大きく空いた私の心の穴に この言葉はすっぽり入ってしまった。 涙があふれた。 肉体のみだった私の身体に 熱い涙が戻ってきた。 ほんの1,2秒の不思議な出来事。 ファン心理を遙かに超えた場所から届けられた感覚 この日 特別 重要な歌になった。

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はぁーさん

凄いの一言です。感無量。

sugar

『ガラスの部屋』〜『Sweet little darlin' 』  投稿読ませてもらいました。 省吾さんの歌がこんな形で人を救ったんですね❤️不思議な出来事。いつも見てるかのように、人生に寄り添ってる❗️ それにしても、すごい表現力です。内容の他に、綴られた言葉たちが心地良いです😊 他にも省吾さんの楽曲に絡んだエピソードがあれば読んでみたいです 。 よろしくお願いします。

いのっち

文学的内容で次回も続きがあるのかと楽しみです。

いのっち

文学的内容で次回も続きがあるのかと楽しみです。