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陽のあたる場所

浜田省吾 / 2005年

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Pickup Episode

一番共感されたエピソード

<傷心から陽のあたる場所へ>
Privateな時間にどんなことが起きようと それが たとえ 息をする方法さえ分からなくなるほど 心を締め付けるものであったとしても いざ 出勤の朝が来ると 
何事もなかったかのような顔で出社し 笑顔で一日仕事をこなす。
点滅しかけた青信号を慌てて渡りきるサラリーマンも
きれいにMake upして 流行のマニキュアとミュールでぎこちなさそうに歩くOLも それはきっと一側面に過ぎず 心の中には 寂しさや悲しみをいっぱい持っていたりするのだろう。
時間のみが 私の背中を押して 私を会社へ連れ出す朝と それを終えて迎える途方もない夜の繰り返しの中で それでも 確実に時は進んでいく。

私は 舗道に敷かれた正方形の石の上を コツコツと音を鳴らしながら歩くハイヒールを見つめて 毎朝 同じことを 自分の中で問いかけていた。

- 私はいったい 何を望んでいたのだろう
傍で見てきた彼と彼女の暮らしが ただ 場所を変えるだけのことに
何故 そんなにうろたえるのか
彼女との仮の暮らしが 「結婚」という形態に変わる事への 恐れなのか
「今」しか見ないと言いながら
どこかで私も その「先」を期待していたのか
それとも 彼は 誰とも結婚しないのだと いつのまにか 自分勝手に決めていたのか –

とにかく 出来るだけ早く 彼の傍から離れなければならない。
そう思えば思うほど 益々 彼の中へ心が入り込んでいく。
この矛盾する想いが 同量のバランスで私の身体を二分する。
どうにもならない自分の心が 自分自身を苦しめていた。 

梅雨明けを思わせるような 初夏に似たある日 そろそろ退社しようとした私に 
突然 彼から電話が入った。
 「今日は仕事何時まで?
  よかったら ちょっと会おうよ」
電車通り沿いの喫茶店の2階で待ってると彼は言った。
堂々と明るい時間帯に喫茶店で待ち合わせをするなんて デートらしくていいなあと思った。
会社のビルを出ると 心地よい風が吹いていた。

彼は窓際のテーブルで 煙草を吸いながら 外を見ていた。
私は咄嗟に 胸に抱えた問題を飲み込んだ。
彼と会うこの時間を その問題で費やす必要はないと思った。
これは私自身の問題なのだ。
どうしたいのかは 私自身が決める問題であって 決めたからには 
誰のせいでもなく 私が私自身に下した決定なのだ。

私に気づいた彼は 「元気だった?」と微笑んだ。
 「うん。元気だったよ。
  ちょうど今、お盆帰省の発売時期で 仕事はハードだけどね」

お互い 仕事の話や 最近読んだ本の事 感動したドラマの事などを話し、
時折 お腹を抱えて笑い転げたりした。
話がスムーズに繋がるほどではなかったが、しばらく会えなかった時間が
言葉を失くしたあの日の二人を 少し元に戻してくれているようだった。
話題と話題の切れ間には 外の電車や行き交う人に目をやって 隙間の時間をも 
安らいだ気持ちで楽しんだ。
何度目かの その途切れた時間の時だった。
彼の言葉が唐突に しかし 意を決したかのような落ち着きを伴って 
私の耳に入ってきた。

 「俺 最初は 一人で東京へ行こうと思うんだ。
  それに すぐってわけじゃなくて 1か月くらいはまだいるから」

一瞬 耳を疑った。
同時に 胸に痛みが走った。
彼は このことを伝えようとして 今日 私を呼び出したのだ。
飲み込んだはずの問題が体中に出てきている。
彼女との東京行きを聞いて以来 ずっと このことばかりを考えてきたことが
一目瞭然 バレてしまうほど 鼓動は速さを増していった。
いや この時ではなく とっくに 彼は私の心を見透かしていたから 
彼もあの日以来 この事を考え続け 今日 ここに 私を呼び出したのだ。
愛には形がない。
だけど 今の彼に出来る 精一杯の答えを出して 私への気持ちを表現してくれているのが 痛いほど 解った。

彼女が彼に付いて行かないと言ったわけじゃない。
ただ 時間がちょっとズレるだけで いずれは 生活を共にするのだ。
起こりかけている現状だけを ひとつひとつ追えば 私のしていることは
未来のない 非生産的なことばかりなのかもしれない。
陽の当たる場所と、その影と・・・。

心配した別の友達が わざわざ会社へ電話をかけてきて
“彼とうまくいってる?”と聞いたことがある。
どうも 彼と彼女が 腕を組んで歩いているのを見かけたらしかった。
“大丈夫だよォ!”と元気に答えると
“とてもスタイルが良くて きれいな人だったよ”と付け加えてくれた。
遠回しに“やめときなよ”と言ってくれているのがわかった。
私の返事も 強がりに聞こえたのかもしれない。

倫理とか 世間体とかじゃなく
自分の気持ちに 素直になろうとすればするほど 傷つき 傷つけてしまう心。

 🎵 僕のもう一つの 愛の暮らしに
    触れないように

   もしも この愛に 形があれば
   
省吾の声が 彼の痛みと重なった。

翌日から また私は いつもと変わらないひとりの朝を迎え 
いつもと同じ顔で 会社へと向かった。
舗道に敷き詰められた 正方形の石を踏みながら
コツコツと鳴るハイヒールのかかとの音を聞きながら
そして 同じ問いを 自分に投げかけながら…

- いずれ 彼の傍を去らなければならない日がやって来る
それならば 少しでも悲しみが これ以上深くならないうちに
今 終わりにしたほうがいいのだろうか。
それとも もっと強い痛手を覚悟で
その日が来るのを待った方がいいのだろうか。
どちらを選択しても 一度はぼろぼろになることは解っていた。
だったら 敢えて 今 無理に 
その状況を自分で作る必要はないのではないか… -

今の私は まるで10㎝巾ほどの高いブロック塀の上を 危なげに歩いているようだ。
だけど 何かの瞬間 足を踏み外して 右に落ちるのか 左に落ちるのかは
私の決められることではないような気がしていた。
でも どちらに落ちても また そこから必要な事態が展開されていくような
不思議な安堵感を伴った気分だった。

この日の朝 静かな水面に ポトンと小石が落ちるように 答えが出た。

Smile 2024/08/31
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この曲に寄せられたエピソード

(16件)
  • 『陽のあたる場所』を初めて聴いた時に、この曲は浜田さんから私達ファンに対する感謝の気持ちを込めた歌だと感じました。
    友達やまわりの人達には、
    「不倫の歌でしょ、子供だね」って笑われたけど60代になった今でも純粋に浜田さんから私にありがとうって言ってくれてる歌だと信じています。

    コニー 2024/08/06
  • ずいぶん前の姉との会話
    姉『この曲ってボクシングやってる人の歌詞の世界観やんなぁ~浜省ってボクシング好きなんかな?』
    私『えっ?何で?』
    姉『誰よりも許せずにいるのは『ボクサー』って言ってるやん』
    私『・・・歌詞書いてる紙見てないからやん』
    歌詞カードを見ない姉の聞き間違え
    この曲を聞くたび懐かしく思い出します

    ふじこ 2024/08/03
  • 留学期間だけ、だったはずが帰国しても幾度となく会っていました。
    彼には婚約者がいて、帰国したら結婚することも決まってた。

    歌詞の通り、
    君への気持ちは嘘偽りない。
    何のしがらみもなかったら
    君を選ぶ。
    でも
    あいつは俺がいないとダメなんだ。

    ずるいですよね。
    しかも
    『しがらみ』で彼女を選ぶんだって。
    しがらみなんて
    気にするなって言ってたくせに。

    泣いて泣いて、泣きながら最後の手紙書いて、、
    私も言いました。

    私たち,友達のままだったら
    別れなくて済んだのにね。
    ずっと笑っていられたのに。

    J-Girl.Sakura 2024/08/03
  • 今から42前の当時13歳、夜ふとラジオから流れてきた「陽のあたる場所」、その時初めて浜田省吾という男性を知りました。中学生の私の頭の中はかっこいい人なんだろうの想像が…
    それから勉強の合間に浜田省吾のラジオを聞くことの楽しみを知っていった。やがて高校生になり初めての文化祭で先輩達がライブをした、その曲がまたも浜田省吾の「JBOY」「MONEY」、先輩もかっこいいけどやっぱり省吾さんが好きと思いながら聴いていた。この頃省吾さんが結婚していることを知り、10代の私は大失恋をする…ご飯も食べれず親が心配するほどの失恋だった。今思うとかわいらしい失恋だった。そんな私も普通に恋愛をし未婚だったが出産もした。
    持病をもっていたせいで早産で超未熟児の小さな小さな女の子を出産した。この頃は省吾の「家路」を聴きながら都市高速を走り保育器に入って生きよう!と頑張ってる娘に会いに病院へ通った。たった一人で、娘の無事を祈り、必ず家に連れて帰る!そう信じて孤独と戦った。
    430gしかなかった小さな娘は半年で無事に退院し、毎日一人で通った孤独な道を娘と二人で「家路」を聴きながら
    自宅へと帰った。それからの日々は悪戦苦闘の毎日、一人泣いたり笑ったり、シングルマザーでの子育てに仕事、あっという間に23の月日が経ち今では私も54歳、今でも楽しみは省吾さんのライブと寝る前の省吾さんの歌、「遠くへ」の「星が一つ空から降りてきてあなたの道を照らすのよと…」の歌詞、私の生きる道照らしてくれる、そんな気持ちになれる、今でも…真実の愛にご縁はなかったけど、省吾さんの出会えたことが陽のあたる場所なんだと今そう思う…

    AKIKO 2024/08/02
  • 2年前まで、18年間妻子ある方とお付き合いしてました。経営しているスナックのお客さんからはじまりその時私にも旦那がいました。年齢も17歳離れていて魅力的な人でした。色々な事があり旦那にもバレてしまい私は離婚しましたが、彼は、18年私の側にいてくれました。彼の家庭の事も受け入れながら。省吾サンのこの曲を聞くと、その時の彼の気持ちを代弁してるようで悲しくてもなり、複雑な気持ちにもなりましたが、今は、ようやく思い出として冷静に聞く事ができます。

    マーリー 2024/08/02
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