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君に会うまでは

浜田省吾 / 1990年

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Pickup Episode

一番共感されたエピソード

「誕生日に好きな人と一緒に過ごすって いいよぉ~。何か理由をつけて会って来なよ」
私には思いもよらない そんな素敵な事を いとも簡単に発案してくる友達に背中を押されて 私にとってはかなり勇気のいる事ではあったが ゆっくり電話のダイヤルを回してみた。
 「もしもし・・・」
受話器越しに 彼の声が 何とも言えない心地よさで私に届いた。
 「あの… 
作ってもらった曲のことで ちょっと相談に乗ってもらいたくて…
今日 時間 空いてますか?」
 「音域に無理があった?
  いいよ。でも何か楽器があったほうがいいから 僕の家でよかったら
  今から出て来る?」

彼と個人的に会うのは これが2度目だった。
ガチガチの緊張の中 曲を書いてもらった時と そして この日。
一人で男の人と会うという事も ましてや部屋へ行くという事も 誕生日に好きな人と過ごすという事も その事のみに限定された その時だけの出来事であって そこから何かがどこかへ繋がっていくという事さえ予想できない程の未熟さで 彼の家を目指した。

そのバスの窓から見える5月の夕日は 付近の空と山を微妙な色に染め替え 刻一刻と
様相を変えながら 私の心の中に やわらかく ゆっくりと 入り込んできた。
バス停で待つ 彼の横顔が その淡いオレンジに染まっていた。

 「実は 私 今日 誕生日なんです」
彼の部屋にはSilverというバンドの“Musician”が流れていた。
 「そうなんだ おめでとう 二十歳? 記念の日だね」

自分の心に気づかず過ごした1年。
その遠い存在だった彼と 今 こうして誕生日を過ごしている。
お祝いだからと 外でゆっくり食事をした後 駅までの川のほとりを二人黙って歩いた。
すぐそばを4車線の道路が走っているにもかかわらず
行き交う車の音も 街のざわめきも聞こえない。
川面に落ちて揺らめく街頭や高層マンションの明かり 連なって流れる車のライトが 空の藍色に溶け込んでいた。

市街から少し離れた小さなその駅は 人影もまばらで 改札口では 駅員が手持無沙汰な様子で ハサミを時折 くるんと回した。
静まり返ったその空間では 券売機も気を遣っているように思えた。
ライトだけが 白すぎる程の明るさで 煌々と駅舎を照らしていた。

私は切符を手に 今夜のお礼を言おうとした。
その時 壁に貼られた時刻表の前で 彼は最終電車の時刻を黙って指さした。
その事が何を意味しているのか 少し気にはなったが 私は 一呼吸おいて
“今夜はありがとう” そう言って 改札をくぐった。

提案はしたものの 心配になった友達が 翌日 電話をかけてきた。
彼女に言わせると どうも危なっかしくて見ていられないらしい。
午後から 彼女の家でコーヒーを飲みながら 夕べの駅での事を話すと 答えの代わりに “浜田省吾の歌に こんな曲があるのよ”と言って カセットテープをかけてくれた。

 🎵 腕組歩くよ 夜の街 二人
   
彼が黙って示した指は
- 1本 電車を遅らせないか –
- もう少し 一緒に居ないか –
そういう意味だったんだと 初めて気づいた。
と同時に 時計をそっとバッグにしまい また それに気づかないふりで歩く そんな二人に そして 言葉で引き止めなかった彼の指に たまらない切なさと魅力を感じた。

昨日までの私より 少し大人になれた気がした。

Smile 2024/08/27
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この曲に寄せられたエピソード

(27件)
  • 僕には大学時代に知り合った友人がいます。彼は自分の生まれ育った街を離れ、大学生活を賃貸アパートでひとり暮らしをしていました。彼とは共通の趣味である、フォークギターの弾き語りで、意気投合して知り合いました。練習場は彼のアパートです。今思うと私よりも彼が遥かにギターの腕前は高かったです。私も負けずにギターの練習をしたのですが、Fコードのギターの音色が霞んで聴こえるのは僕も知っていました。彼がリードギターを、僕はリズムギターのパートを弾き、メインボーカルは僕が唄い、彼はハモリのパートを唄っていました。そして夢はeasy moneyを貯めて、大学生活の締めくくりの記念として、レコード製作を行うことでした。
    しかし、そう簡単にeasy moneyは溜めることはできず、就職試験に突入しました。
    就職試験に入ったら、お互い時間のすれ違いで、ギターの練習で会うこともなくなってしまいました。お互い大学卒業後は僕は関東のメーカーに、彼は関西のメーカーに就職し、彼と交わすのは年初の年賀状のみになっていました。
    そんな彼から年賀状以外で手紙が届きました。その手紙には学生時代から付き合っていた彼女と結婚する報告と、結婚式への参列と披露宴に参加してほしいと記載されていました。
    披露宴では余興として久しぶりにギター演奏しようという文字が太字で書かれていました。
    一緒に音合わせを行ったのは結婚式&披露宴当日の1時間程度です。
    学生時代が蘇る楽曲を彼と共に、彼女、そして親族、立席した皆さんの前で無事に演奏することができました。
    その楽曲こそが、浜田さんの君に出会う前は です。
    彼にとっては、奥様になる彼女に出会う前は、
    僕にとっては、彼(お前)に出会う前は。
    今でも、君に出会う前は を浜田さんの声で聴くたびに、彼(お前)とあの頃の僕(自分)を思い出します。ありがとう。君に会うまでは。

    薩摩おごじょ 2024/08/04
  • 1988年8月渚園。
    私はまだ20代。当時の彼女と初めて行ったコンサート。彼女はコンサート終盤、体調が悪く最後まで会場に居られず、後ろ髪を引かれる思いで会場をあとに。
    あの時はラストダンスを浜田さんは歌ってた。でもなぜか私の記憶にある曲は、静岡市内の繁華街を2人で歩いた時、頭に浮かんでた曲は『君に会うまでは』だったな。
    何故だろうか。
    今でもわからない。
    記憶と言うのは、こんなものかもしれないな。

    ゆたぽん 2024/08/03
  • 君に会うまでが、が1番好き。
    子育てに必死に昼、夜。働いてた時に、この曲を歌う男性がいました。恋愛から離れて、恋する気持ちを忘れていた時、ゆったりなふんわり癒されるこの曲に会いました。寂しい気持ちがなんだか、自分に言われているみたいな、また、母じゃなくて、女性の気持ちを呼びおこしてくれる彼の歌、こえ。あの男性が、今の彼です。
    10歳の年上の彼。あれから6年経ちます。
    秋は、浜省のコンサートに初参加します。

    君に会うまでは、、生で聞きたい。聞いて泣きたい。悲しい涙じゃなくて、
    出会ったことにありがとう、感謝と感動で、涙を流したい。
    こんな次代だからこそ、良い曲、ステキな彼に会える奇跡をムービーにしたい。

    クローバー 2024/08/03
  • 高校1年生の時に、この曲に出会いました。
    歌詞の1つ1つの情景が浮かび、自分より少しお兄さん、お姉さんの2人の歌。そして、この男性の誠実さ優しさを感じました。女性が羨ましいと思いました。将来、こんな人と出会い、幸せになりたいと願っていましたが、この男性のような?人かわかりませんが(笑)主人と結婚し32年経ちました。今も、この曲を聴くとあの高校生の頃の恋愛に憧れる自分を思い出します。浜田省吾さんは、テレビに出ない方なのですが、素晴らしい楽曲がたくさんあり、今の時代にも古くなく受け入れられる曲に惹かれ続けています。

    菅原美紀子 2024/08/02
  • 5つ上の音楽好きの兄の影響で小学3年くらいからビートルズなどを聴いていました。浜田省吾さんを初めて知ったのは武道館LIVEのカセットテープでした。それから数年、高校3年の夏休みに自分のバイト先に3日間だけ都会から同い年の女性が派遣されてきました。周りの大学生の先輩たちに踊らされ電話番号を聞き、夏休みの終わりには初デート…その後、週に一度のバイトの休みの日の学校終わりには、電車で彼女の住む都会へ電車で向かい数時間のデート…そんな日々の中、彼女へ省吾さんの片思いを聴いてほしくて、サンドキャッスルのテープを渡したところ彼女の感想は、1曲目の君に逢うまではが好きだと言う事で、その後の週イチのデート中の僕の頭の中では、君に逢うまではが流れていました。そんな彼女とは十数年前に偶然再会…当時と変わらずキレイな彼女…互いに大学生の子どもの親になった今でも、互いの誕生日や年始の挨拶等をメールでやり取りする素敵な関係が続いています。

    Gamachng 2024/08/02
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